女薬剤師のメモ帳(漢方薬)

病院で働く女薬剤師の記録

動物由来の生薬や医薬品

動物性生薬と動物由来の医薬品

 

 

富山のくすりと動物生薬

◎六神丸(ろくしんがん)

 ・第2類医薬品になります。

 ・六神丸は動機、息切れの症状や、気付け薬として用いられます。

 ・救心とほとんど中身は同じらしいです。

 ・以下の主な成分が含まれています。

成分 分量
(4粒中)

センソ

・・・ヒキガエルの耳腺の分泌物(油)

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3mg

ジャコウ(麝香)

・・・オスのジャコウジカの腹部にある腺の分泌物

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1mg

ゴオウ(牛黄)

・・・牛の胆のうの中で生じた結石(胆石)

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2mg

ユウタン(熊胆)

・・・ツキノワグマの胆のう

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1mg

真珠

・・・みなさん分かりますね。

   貝の体内で生成される生体鉱物です。

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2mg

ロクジョウ(鹿茸)末

・・・オスのシカの幼角。

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3mg

ジンコウ(沈香

・・・ジンチョウゲ科の

   ジンコウという木の樹脂が沈殿した部分。

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4mg

ニンジン(人参)末

・・・ウコギ科のチョウセンニンジンの根。

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3mg

【第2類医薬品】虔修六神丸 70粒

★六神丸の主薬のセンソは

 ・ヒキガエル(ガマガエル)の耳下腺(背中の皮膚)から分泌される毒腺分泌物で、

  強心ステロイドになります。

 (ブファジエノリド:ブファリン、ブフォタリン、シノブフォタリン)

 ・これに似たようなものの植物性のもので、

  ジギタリスジギトキシンや、スズランの毒でコンパラトキシンがあります。

 ・ジギトキシンは蓄積性が高い💦

 

・・・熊胆が含まれていますね。

   次は熊胆についてです。

 

◎熊胆圓(ゆうたんえん)

【第2類医薬品】熊胆圓S 52包

 ・ツキノワグマの胆嚢=ユウタン(熊の胆:くまのい)と呼ばれます。

  熊胆は、胆汁酸の混合物脂肪分解作用ある生薬です。

  有効成分として、今では医薬品としても広くも使われている

  ウルソデオキシコール酸が含まれています。

  

 

  ※ウルソデオキシコール酸とは

   胆汁分泌の促進作用により胆汁の流れを改善し、

   また、肝臓で疎水性胆汁酸と置き換わり、肝細胞の障害を軽減します。

   さらにサイトカイン・ケモカイン産生抑制作用や

   肝臓への炎症細胞浸潤抑制作用により肝機能を改善します。

   他に胆石溶解作用消化吸収改善作用があります。

   通常、胆道系疾患・胆汁の流れが悪くなって起こる肝疾患の治療

   小腸切除後や炎症性小腸疾患における消化不良の改善

   コレステロール系胆石の溶解

   慢性肝疾患原発性胆汁性肝硬変およびC型慢性肝疾患における肝機能の改善

   に用いられます。

 

 ・熊胆圓に含まれるものとして

  アカメガシワ

  ウコン、

  動物胆

  アロエ

  オウレン、

  オウバク

  センブリ、

  ゲンチアナ、

  ダイオウが入っています。

  (各メーカーで少し異なることがあります。)

 ・胃腸系の成分が含まれているようです。

 ・動物胆は牛の胆になります。

 ・ユウタン(ツキノワグマの胆)は

  絶滅危惧種ワシントン条約商品取引禁止されているので、

  ユウタンの代わりのものとして、動物胆(牛の胆=牛黄)が使われています。

  

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中国に日本のクマが輸出され胆汁を取られている図

 ・動物胆とユウタンは、生物学的同等性が認められています。

 (膵臓リパーゼ活性)

 ・つまり、熊胆圓といいながら熊胆が入っていない!!

  ということです。

 

◎レイヨウの角(使用制限)

 中国、ベトナムなどで使われていた。

 密猟されているようです💦

 

◎サイの角

 :犀角(さいかく)(使用禁止)→これも密猟されているようです💦

 

◎水牛の角

 :ペプチド性抗酸化剤として使える可能性があります。

 

 

◎第17改正日本薬局方(医薬品各条、生薬等)

 ・センソ(ガマ皮膚毒)

 ・ユウタン(クマ胆嚢)

 ・ゴオウ(ウシの胆石)

 ・ボレイ(カキ殻)

 ※生薬としては244種あるうちのたったの4種しかありません!

 ※これぐらいしか、薬として認められていない!

 

◎日本薬局生薬規格2015(局外正規2015)

 ・アキョウ(ロバの皮)

 ・ジリュウ(ミミズ)

 ・センタイ(セミの抜け殻)

 ・ドベッコウ(スッポンの甲羅)

 ・ビャッキョウサン(カビのついたカイコ)

 ※これぐらいしか、薬として認められていない!

 

◎原色和漢薬図鑑

 ・425種の生薬が記載されていますが、そのうち、動物由来のものは51種です

 ・ごうかい(ヤモリ)

 ・ぜんかつ(サソリ)

 ・すいてつ(ヒル)→血の流れを良くする

 ・ろくじょう(シカの角)

 ・ごこう(ムカデ)

 ・しゃちゅう(ゴキブリ)

 ・ぼうちゅう(アブ)

 ・せんたい(セミの抜け殻)

 ・はんみょう(ハンミョウ)

 ・まごたろうむし(水性昆虫)

 ・ろほうぼう(ハチの巣)→ある意味植物性

 ・ぼれい(カキの貝殻)

 ・あきょう(ロバの皮)→ゼラチン。美容にも良い。 などなど・・・

 

ギリシャ本草

 ・900種のうち106種が動物由来です。

 

◎日本の局方品への動物由来の生薬の認定率が低い!!2%ほど!

 

富山大学附属病院薬剤部(過去数年で実際どの程度使われているのか)

 ・きばんきょう(カメの甲羅)

 ・きょうさん(カビのついたカイコ)

 ・さいかく(サイの角)

 ・あきょう(ロバの皮)

 ・じりゅう(ミミズ)

 ・せんたい(セミの抜け殻)

 ・ちょたん(イノシシノの胆嚢)

 ・どべっこう(スッポンの甲羅)

 ・はんび(マムシ

 ・ぼうちゅう(アブ)

 ・れいようかく(レイヨウの角)

 ・ろくじょうきょう(シカの角)

 ・ろほうぼう(ハチの巣)

 ※年に1~2回程くらいしかでない。

 

◎日本の毒蛇

 ・ハブ

 ・ヤマカガシ

 ・ニホンマムシ反鼻(はんび、生薬):滋養強壮ドリンク剤です。

         ※マムシ酒など民間薬もあります。

         ※養命酒にも含まれています。

 

養命酒の成分にもハンビが含まれている

 ・インヨウカク、ウコン、ケイヒ、コウカ、ジオウ、シャクヤク

  、チョウジ、トチュウ、ニクジュヨウ、ニンジン、ボウフウ、

  ヤクモソウ、ウショウ、ハンビ(ほんの少し。)

 

◎ユンケル皇帝ロイヤルにもハンビが含まれている

 ・エレウテロコック流エキス(エゾウコギ)、黄精流エキス、イカリソウ

  シベットチンキ(タツノオトシゴ)、海馬チンキM、反鼻チンキ

  酢酸αトコフェロール、ビタミンB12、γオリザノール、無水カフェイン

 

◎地竜

 ・基原:ミミズの乾燥物

 ・産地:中国、タイ

 ・薬味・薬性:鹹(かん、しおからい)・寒

 ・成分:lumbritin、limbrofebrin、terrestro‐lumbrilysin、hypoxanthine、各種アミノ酸

 ・薬理作用:解熱作用、気管支拡張作用、降圧作用(ACE阻害作用ペプチド)

 ・用途:解熱、鎮痙、利尿、解毒薬

  ※煎じる過程で、ペプチドが分解されて、その分解物が解熱作用をもつ

  ※匂いが変

 

◎センタイ

 ・基原:クマゼミ類幼虫の抜け殻

 ・薬理作用:鎮静、神経節遮断作用

 ・臨床応用:解熱、止痒、消炎、鎮静(破傷風などの痙攣発作の鎮静に)

 ・主要成分:キチン質

 ・繁用疾患:発熱、喉痛、咳嗽、嗄声、麻疹、蕁麻疹、湿疹、芽の充血、

       角膜混濁、破傷風、痙攣、夜泣き

 ・含有方剤:消風散(しょうふうさん)

 

◎動物由来の医薬品 ~医薬資源としての動物毒~

 ・カプトプリル(ACE阻害薬)→日本にいない蛇(Bothrops jararaca)由来

                ブラジキニン活性増強ぺプチド

 ・毒トカゲ(アメリカオオトカゲ)から糖尿病薬

           →唾液毒 エキセンジン‐4(消化管ホルモン作用)

            ※インスリン分泌作用

           →バイエッタ(エキセナチド):GLP‐1受容体作動薬

 ・ホロトキシン(抗白癬菌)→ナマコの表面から抽出された(粘液が抗かび作用)

 ・ジコノチド(イモガイから)→N型Caチャンネル阻害→慢性疼痛鎮痛剤

                ※日本にはまだない薬

 ・海綿由来の異常ヌクレオシド抗がん剤、抗ウイルス薬の開発に

                例)ビダラビン、アシクロビル、アジドチミジン

 

 ・クロイソカイメンのハリコンドリンB(細胞毒性)の全合成で

        →エリブリン(ハラヴェン)が抗がん剤として働きます。

 

◎まとめ

 ・日本で認められている動物由来生薬は結構少ない

 ・エビデンスが少ない

 ・市販に売られているものにも動物由来生薬は含まれている