動物性生薬と動物由来の医薬品
- 富山のくすりと動物生薬
- ◎レイヨウの角(使用制限)
- ◎サイの角
- ◎水牛の角
- ◎第17改正日本薬局方(医薬品各条、生薬等)
- ◎日本薬局外生薬規格2015(局外正規2015)
- ◎原色和漢薬図鑑
- ◎ギリシャ本草
- ◎日本の毒蛇
- ◎地竜
- ◎センタイ
- ◎動物由来の医薬品 ~医薬資源としての動物毒~
- ◎まとめ
富山のくすりと動物生薬
◎六神丸(ろくしんがん)
・第2類医薬品になります。
・六神丸は動機、息切れの症状や、気付け薬として用いられます。
・救心とほとんど中身は同じらしいです。
・以下の主な成分が含まれています。
成分 | 分量 (4粒中) |
---|---|
センソ ・・・ヒキガエルの耳腺の分泌物(油) |
3mg |
ジャコウ(麝香) ・・・オスのジャコウジカの腹部にある腺の分泌物
|
1mg |
ゴオウ(牛黄) ・・・牛の胆のうの中で生じた結石(胆石)
|
2mg |
ユウタン(熊胆) ・・・ツキノワグマの胆のう |
1mg |
真珠 ・・・みなさん分かりますね。 貝の体内で生成される生体鉱物です。 |
2mg |
ロクジョウ(鹿茸)末 ・・・オスのシカの幼角。 |
3mg |
ジンコウ(沈香) ・・・ジンチョウゲ科の ジンコウという木の樹脂が沈殿した部分。 |
4mg |
ニンジン(人参)末 ・・・ウコギ科のチョウセンニンジンの根。 |
3mg |
★六神丸の主薬のセンソは
・ヒキガエル(ガマガエル)の耳下腺(背中の皮膚)から分泌される毒腺分泌物で、
強心ステロイドになります。
(ブファジエノリド:ブファリン、ブフォタリン、シノブフォタリン)
・これに似たようなものの植物性のもので、
ジギタリスのジギトキシンや、スズランの毒でコンパラトキシンがあります。
・ジギトキシンは蓄積性が高い💦
・・・熊胆が含まれていますね。
次は熊胆についてです。
◎熊胆圓(ゆうたんえん)
・ツキノワグマの胆嚢=ユウタン(熊の胆:くまのい)と呼ばれます。
熊胆は、胆汁酸の混合物で脂肪分解作用のある生薬です。
有効成分として、今では医薬品としても広くも使われている
ウルソデオキシコール酸が含まれています。
※ウルソデオキシコール酸とは
胆汁分泌の促進作用により胆汁の流れを改善し、
また、肝臓で疎水性胆汁酸と置き換わり、肝細胞の障害を軽減します。
さらにサイトカイン・ケモカイン産生抑制作用や
肝臓への炎症細胞浸潤抑制作用により肝機能を改善します。
他に胆石溶解作用、消化吸収改善作用があります。
通常、胆道系疾患・胆汁の流れが悪くなって起こる肝疾患の治療、
小腸切除後や炎症性小腸疾患における消化不良の改善、
コレステロール系胆石の溶解、
慢性肝疾患、原発性胆汁性肝硬変およびC型慢性肝疾患における肝機能の改善
に用いられます。
・熊胆圓に含まれるものとして
ウコン、
動物胆、
アロエ、
オウレン、
オウバク、
センブリ、
ゲンチアナ、
ダイオウが入っています。
(各メーカーで少し異なることがあります。)
・胃腸系の成分が含まれているようです。
・動物胆は牛の胆になります。
・ユウタン(ツキノワグマの胆)は
ユウタンの代わりのものとして、動物胆(牛の胆=牛黄)が使われています。
・動物胆とユウタンは、生物学的同等性が認められています。
(膵臓リパーゼ活性)
・つまり、熊胆圓といいながら熊胆が入っていない!!
ということです。
◎レイヨウの角(使用制限)
中国、ベトナムなどで使われていた。
密猟されているようです💦
◎サイの角
:犀角(さいかく)(使用禁止)→これも密猟されているようです💦
◎水牛の角
:ペプチド性抗酸化剤として使える可能性があります。
◎第17改正日本薬局方(医薬品各条、生薬等)
・センソ(ガマ皮膚毒)
・ユウタン(クマ胆嚢)
・ゴオウ(ウシの胆石)
・ボレイ(カキ殻)
※生薬としては244種あるうちのたったの4種しかありません!
※これぐらいしか、薬として認められていない!
◎日本薬局外生薬規格2015(局外正規2015)
・アキョウ(ロバの皮)
・ジリュウ(ミミズ)
・センタイ(セミの抜け殻)
・ドベッコウ(スッポンの甲羅)
・ビャッキョウサン(カビのついたカイコ)
※これぐらいしか、薬として認められていない!
◎原色和漢薬図鑑
・425種の生薬が記載されていますが、そのうち、動物由来のものは51種です
・ごうかい(ヤモリ)
・ぜんかつ(サソリ)
・すいてつ(ヒル)→血の流れを良くする
・ろくじょう(シカの角)
・ごこう(ムカデ)
・しゃちゅう(ゴキブリ)
・ぼうちゅう(アブ)
・せんたい(セミの抜け殻)
・はんみょう(ハンミョウ)
・まごたろうむし(水性昆虫)
・ろほうぼう(ハチの巣)→ある意味植物性
・ぼれい(カキの貝殻)
・あきょう(ロバの皮)→ゼラチン。美容にも良い。 などなど・・・
◎ギリシャ本草
・900種のうち106種が動物由来です。
◎日本の局方品への動物由来の生薬の認定率が低い!!2%ほど!
◎富山大学附属病院薬剤部(過去数年で実際どの程度使われているのか)
・きばんきょう(カメの甲羅)
・きょうさん(カビのついたカイコ)
・さいかく(サイの角)
・あきょう(ロバの皮)
・じりゅう(ミミズ)
・せんたい(セミの抜け殻)
・ちょたん(イノシシノの胆嚢)
・どべっこう(スッポンの甲羅)
・はんび(マムシ)
・ぼうちゅう(アブ)
・れいようかく(レイヨウの角)
・ろくじょうきょう(シカの角)
・ろほうぼう(ハチの巣)
※年に1~2回程くらいしかでない。
◎日本の毒蛇
・ハブ
・ヤマカガシ
・ニホンマムシ→反鼻(はんび、生薬):滋養強壮ドリンク剤です。
※マムシ酒など民間薬もあります。
※養命酒にも含まれています。
◎養命酒の成分にもハンビが含まれている
・インヨウカク、ウコン、ケイヒ、コウカ、ジオウ、シャクヤク
、チョウジ、トチュウ、ニクジュヨウ、ニンジン、ボウフウ、
ヤクモソウ、ウショウ、ハンビ(ほんの少し。)
◎ユンケル皇帝ロイヤルにもハンビが含まれている
・エレウテロコック流エキス(エゾウコギ)、黄精流エキス、イカリソウ、
シベットチンキ(タツノオトシゴ)、海馬チンキM、反鼻チンキ、
酢酸αトコフェロール、ビタミンB12、γオリザノール、無水カフェイン
◎地竜
・基原:ミミズの乾燥物
・産地:中国、タイ
・薬味・薬性:鹹(かん、しおからい)・寒
・成分:lumbritin、limbrofebrin、terrestro‐lumbrilysin、hypoxanthine、各種アミノ酸
・薬理作用:解熱作用、気管支拡張作用、降圧作用(ACE阻害作用ペプチド)
・用途:解熱、鎮痙、利尿、解毒薬
※煎じる過程で、ペプチドが分解されて、その分解物が解熱作用をもつ
※匂いが変
◎センタイ
・基原:クマゼミ類幼虫の抜け殻
・薬理作用:鎮静、神経節遮断作用
・臨床応用:解熱、止痒、消炎、鎮静(破傷風などの痙攣発作の鎮静に)
・主要成分:キチン質
・繁用疾患:発熱、喉痛、咳嗽、嗄声、麻疹、蕁麻疹、湿疹、芽の充血、
角膜混濁、破傷風、痙攣、夜泣き
・含有方剤:消風散(しょうふうさん)
◎動物由来の医薬品 ~医薬資源としての動物毒~
・カプトプリル(ACE阻害薬)→日本にいない蛇(Bothrops jararaca)由来
ブラジキニン活性増強ぺプチド
・毒トカゲ(アメリカオオトカゲ)から糖尿病薬
→唾液毒 エキセンジン‐4(消化管ホルモン作用)
※インスリン分泌作用
→バイエッタ(エキセナチド):GLP‐1受容体作動薬
・ホロトキシン(抗白癬菌)→ナマコの表面から抽出された(粘液が抗かび作用)
・ジコノチド(イモガイから)→N型Caチャンネル阻害→慢性疼痛鎮痛剤
※日本にはまだない薬
・海綿由来の異常ヌクレオシド→抗がん剤、抗ウイルス薬の開発に
例)ビダラビン、アシクロビル、アジドチミジン
・クロイソカイメンのハリコンドリンB(細胞毒性)の全合成で
→エリブリン(ハラヴェン)が抗がん剤として働きます。
◎まとめ
・日本で認められている動物由来生薬は結構少ない
・エビデンスが少ない
・市販に売られているものにも動物由来生薬は含まれている